聖書の舞台(人物・組織)
 

メッセージに聖書の舞台の人物や組織が出てきたら、それをフリー写真を使って解説していく「聖書の舞台」です。クリスチャンの方も、そうでない方も、聖書をより身近に感じられるようになりますように!

 

あ行

イスラエルの民

 聖書に出てくる人たちを「どう呼称するか?」は結構難しいのです。

 この絵にあるのは、アブラハムが神様から生まれ故郷のメソポタミア地方から今のイスラエルの方に行くようお告げを受け(創世記12:1~3)、おいのロトらの家族も含めた一族で旅立つ場面です。神様はアブラハムを選び、異教がはびこる中でアブラハムの子孫によって信仰を守らせ、後の時代にアブラハムの家系から救世主を生まれさせる計画を示しました。神様はアブラハムを「選びの民」とする契約を結び、ついて息子のイサク、その息子のヤコブとも契約を結びました→「失われた十部族」参照)。このヤコブに神様は、以後「イスラエル」と名乗るように告げます(創世記32:28)。このヤコブの12人の息子たちが、その後のイスラエル十二部族の祖になるのです。ですから「イスラエルの民」と言うのは、神様がアブラハムの子孫を選んだ「選びの民」であり、アブラハム、イサク、ヤコブを通じて契約を結んだ「契約の民」であり、「ヤコブ=イスラエルの12人の息子を先祖に持つ家系の人びと」 (ちなみにアブラハムやイサクには、他にも子どもがいましたが(創世記21:9、25:2、25:25)この人たちの子孫は「イスラエルの民」とは言いません) になるのです。ですから人種的にも同じで、同じ国民で、昔からアブラハムさん家のお隣に住んでしても、この家系の人でなければ「異邦人」と呼ばれます。

 なので、このホームページでは、アブラハムからイスラエル王国分裂まで→「失われた十部族」参照)と、「聞け、イスラエル」みたいに特に「選びの民」「契約の民」と言いたいときに「イスラエルの民」使おうと思います。ちなみに「イスラエル人」と言う場合は、1948年に建国された、現在のイスラエル国の国民を指すことが多ので「イスラエル人」は使いません。またダビデらの王国について聖書には名前がありませんし、世界史の教科書も「ヘブライ人の王国」と微妙にぼやかしています。歴史研究では便宜上「ヘブライ王国」としていますが、「へブル(ヘブライ)人」とは「川向うから来た奴ら」ぐらいの意味で外国人との関係では使うが、自らは誇りをもって「イスラエル人」と称していたというので、個々では分裂前の王国を「イスラエル王国」と称しています。

ヨージェフ・モルナール「カナンへの旅立ち」1850年。

うなじのこわい民

  旧約聖書では、よく神様がイスラエルの民のことを「うなじのこわい民だ」と嘆くシーンが出てきます。この「うなじ」とは首の後ろのことで、「こわい」とは「こわいご飯」のように「固い」とということです。右の(モバイル版にあっては上の)絵は、牛につけて荷車を引かせるために「くびき」です。ちょうどよいフリー素材がなかったので描いてみました。この「くびき」を付けるところが牛の「うなじ」ですが、牛が反抗的だと漁社の思うように首を曲げてくれず、まるで固まってしまったように動かなくなります。これが「うなじ」が「こわい」状態です。

 つまり「うなじがこわい」とは、「反抗的で導きたいところに進んでくれない」「頑固で不従順な」という意味です。神様にこんな風に言われるなんて、人間って大概のものですねぇ。

 

か行

カイザル(カエサル)

 「カイザルのものはカイザルに」は、ガイウス・ユリウス・カエサル(シーザー)のことを思い浮かべます。カエサル(シーザー)は、「賽は投げられた」(alea iacta est)、「来た、見た、勝った」(veni, vidi, vici) 、「ブルータス、お前もか (et tu, Brute?)」などの言葉でも有名で、共和制ローマの最後に独裁制への道を開いて帝政のローマ帝国への礎を築いた人です。今のカレンダーの基となる太陽暦の「ユリウス暦」に名前を残した人です。イエス様の誕生より5~60年前の人です。しかし、この場合の「カエサル」とは、「カエサル家の皇帝」またはローマ皇帝」一般を指すものと考えられます。

 ローマ帝国は、カエサルの養子(実姉の孫だった)のアウグストゥスが初代皇帝で、この人は「August(8月)」が生まれ月だったので、7月に続いて8月を「大の月(31日)」にしたとの逸話をのこしています(でも、どうも7月がユリウス・カエサルから、8月がアウグストゥスからと言うのは異論があるようです)。イエス様のころのローマ皇帝は、2代目のティベリウス・ユリウス・カエサルでした。

 マタイ22:19~22に出てくるデナリ硬貨とは、約一日分の賃金に相当するローマの銀貨で、聖書に出てくる硬貨がカエサル(シーザー)の時代ものか、それともアウグストゥスやティベリウスの時代のものかはわかりません。聖書に出てくる「カイザル(カエサル)のものは」のカエサルは、「カエサル家」を、またはローマ皇帝一般を指しているからです。もし、イエス様が取り上げた効果が当時の皇帝だったティベリウスの顔が刻まれた硬貨だとすると、右の写真(モバイル版にあっては下の写真)のようなもので、このような皇帝の顔と銘が刻まれていたことになります。この銘ですが「ティベリウス」を「TI」と略してありますが、その意味は「TI CAESAR DIVI AVG F AVGVSTVS」(崇拝すべき神の崇拝すべき子、皇帝ティベリウス)となっています(右下から反時計回りに読んでみてください)。つまり、この「カエサルの銘の入ったデナリ硬貨の銘を認める」ということは、単に政治的に「税金」をどうこう言う問題以上に、「神の子はイエスさまかティベリウスか」という宗教的な問題まで含んでいます。

ティベリウスのころのデナリ硬貨です。右下から右上へ「TI CAESAR DIVI」上から左下に「AVG F AVGVSTVS」と読めます。出典はわからなくなりました。問題があったらご一報ください。

 

さ行

​サドカイ派(サドカイ人)

 聖書で「〇〇人(びと)」という時、現在のように人種や民族を言う場合もありますが、「〇〇街の人」や「〇〇地域の人」のような使い方も、「〇〇集団の人」や「〇〇派の人」の意味もあります。聖書の「サドカイ人」は民族ではなく、「サドカイ派の人」の意味です。

 「サドカイ派」は、ユダヤ人の中の祭司階級や貴族階級などの権力者で裕福な人びとでした。神殿の権威をバックにしており、イスラエルの最高議会「サンヘドリン」70人の大多数を占めていました。彼らはローマの属国となったイエス様当時のユダヤ王国を維持する方が自分たちの地位も財産も保てるので、親ローマ保守派だったと言えます。宗教的にはモーセ五書→「はじめての教会用語辞典」ま行の「モーセ五書」参照)だけに権威を置き、ユダヤ教の律法を解釈し実生活についての様々な規定を設けた「口伝律法」を認めてはいません。現世的で「神が生活に関わっていること」「死者が復活すること」「死後のいのちがあること」「霊的存在があること」を否定していました。

 紀元66~70年の第一次ユダヤ戦争でローマに神殿が破壊されると、サドカイ派は消滅していきます。

 

た行

ダビデの子

 聖書でイエス様のことを「ダビデの子よ」と叫んでいる箇所が多々あります。

 このダビデと言うのは、イエス様より1000年ほど前のイスラエルの王様で、神様はダビデ王の子孫に救い主(メシア)を誕生させるという約束をされました。そのことは、当時のイスラエルの人は教養としてみんな知っていたので、2019年3月3日のメッセージの中で盲人たちが「ダビデの子よ」と叫んでいるのは「あなたがこそ救い主です」と言っているのと同じことになります。それから、ダビデの「子」ですが、これは今でいう「子=息子」ではなく「子孫」のことです。現在、これにあやかる「ダビデ(ディビッド)の子孫(+ソン)」という名字もあって、アメリカの有名なバイクメーカーの「(ハーレー)ダビッドソン(ディビッドソン)」などが有名ですね。

 ここで聖書雑学を二つ。

 右上の写真(モバイル版では左上)はミケランジェロの有名なダビデ像ですが、これは少年時代のダビデ王(王になる前)です。ペリシテ人(パレスチナ?)の巨大な戦士ゴリアテ(これもアニメ「天空の城ラピュタ」の巨大な飛行戦艦の名前になっていますね→「ダビデとゴリアテ」)に投石器だけで戦いを挑んだ羊飼いダビデ君の姿なのです(真ん中の写真。モバイル版では下左)。肩にかけているのは「手拭い」でなく革の投石器ですね→Wikipedia「ダビデ」の「ダビデとゴリアテ」の絵を参照)

 そしてトランプのスペードのキングは、ダビデ王がモデルだそうです(右下の写真。モバイル版では右上)。ちなみにハートが「カール大帝(フランク王国/神聖ローマ帝国)」、ダイヤが「カエサル(シーザー)(ローマ帝国)」、クラブが「アレクサンダー大王(マケドニア)」です。西洋世界では、これらに並ぶ超有名な王様だったということです。

shutterstock/Pixaby

123RF

トマス New

 イエス様が十字架につけられ、死にて葬られ、三日目によみがえられた後、断続的に弟子たち(十二弟子以外にも)の前に現れた時、イエス様を目撃した他の弟子たちに「私は、その手に釘の後を見、私の指を釘の所に差し入れ、また私の手をそのわきに差し入れてみなければ、決して信じません。」(ヨハネ20:25)と言い切ったのが、このトマスです。つまり十字架に釘で打ち付けられた穴があり、わきの下に槍で刺された穴がないと、本物のイエス様と認めないという訳ですね。なので「疑いのトマス」と呼ばれています。右(モバイル版にあっては上)の絵は、その後、イエス様がトマスの前に表れて「あなたの指をここにつけて、わたしの手を見なさい。手を伸ばして、私のわきに差し入れなさい。」(20:27)と言われてしまったりしています。それでも「うへぇ~滅相もございません」と言わずに、それでは遠慮なくと差し入れているのがトマスの可愛い所です。トマスは、その直後イエス様に「あなたは、わたしを見たから信じたのですか。見ずに信じる者は幸いです。」(20:27)と言われています。

 こう見ると、疑い深くてお調子者のように見えますが、十字架の前は「私たちも行って、主とともに死のうではないか。」(11:16)と熱血に他の弟子に言ったり、上に書いたように確かめて本物とわかったとたん「私の主。私の神。」(20:28)と言ったりしているところを見ると、イエス様が好きすぎて、十字架につけられたことがショックで、でも復活したと信じられたとたん感激しているように私には思えます。

ドゥッチオ・ディ・ブオニンセーニャ作イエスに触れるトマス(部分)」1308-1311頃。

 

な行

熱心党

 イエス様の弟子にも「熱心党員シモン」がいますが、端的に言うと民族主義テロリストです。イエス様の誕生から30年ほど前、ヘロデ大王(先代のヘロデ王)の時代に結成され、反ローマの過激派勢力として活動していました。イエス様の使徒の中に「取税人マタイ」がいますが、これは熱心党からすれば「ローマの狗」でした。ローマは広範な土地の諸民族を支配するために、「ある程度、宗教や文化の独自性を認める」「ローマ皇帝に直接不満が向かないように間に傀儡政権を置く」などの工夫をしていました。取税人も一つで、「重税の不満が直接ローマに向かない制度」です。例えば、ローマが「年10万円」の税を上納するように取税人に命じると、取税人は「15万円」でも「20万円」でも好きに税を徴収し、ローマに「10万円」を納めればよいのです。そのため取税人は簡単に蓄財はできましたが、一方で庶民の恨みを直接買う仕事でした。

 

は行

パリサイ派(パリサイ人)

 これも特定の人種や民族ではなく、党派と言う意味の「〇〇人」です。

 「パリサイ派」は、上に出てきたサドカイ派→さ行「サドカイ派」参照とちがって中産階級の商売人が多く、「シナゴーグ」という市中の礼拝所で「ラビ」と言われるユダヤ教の先生が教える「生活に直結した律法の教え」を守っていくことを誇りとしていました。彼らの宗教観はサドカイ派とは反対に、「日々の生活に神様は関わっている」「死者の復活はある」「死後の世界とさばきはある」「霊的な存在はいる」というものでした。庶民の間で手本となる存在として人気がありましたが、パリサイ(分離する者)の名の通り、律法を守らない(守れない)ものを忌み嫌っていました。安息日だろうが羊の世話をし、野外では律法通りの清めを行わずものを食べる羊飼いの所に天使たちがあらわれ、救世主の誕生を教えるなどというのは、パリサイ派からしたら「ありえない」ことだったのです。

 紀元70年の神殿崩壊後は、生活の中の「口伝律法」を発展させて書物化し、現在のユダヤ教の基となっています。

 

ま行

 

ら・や・わ行

ユダヤ人

 もともとは、イスラエルの十二部族の内の「ユダ族」を称する言葉でしたが、バビロン捕囚あたりから「イスラエルの十二部族」全部を指すようになりました。人種や民族的なものではなく、家系と宗教で定義されます。イエス様のころの話を書くときは、特別な意味を持たせたいときは「イスラエルの民」を使いますが、普通には「ユダヤ人」で書こうと思います。

 A.D.70年にエルサレムが破壊されてからは家系図が失われたので「イスラエルの民のお母さんから生まれた」ことでしか、家系を保証するものがなくなりました(お父さんだと疑いの余地があるのですね)。現在は、イスラエルの「帰還法」では「ユダヤ人の母から生まれたユダヤ教徒」と「正式な手続きをとってユダヤ教に改宗した者」を「ユダヤ人」と呼びます。ちなみにイスラエル国のユダヤ人は「ユダヤ人」「イスラエル人」の両方で呼べますが、ユダヤ人以外のイスラム国民は「イスラエル人」とだけ呼ばれます。もちろん「ユダヤ人」はイスラエル国以外にもたくさんいます。

 ローマ帝国に滅ぼされ、全世界に散ったユダヤ人は、様々な民族と混じった結果、いろいろな外見的要素を備えています。またキリスト教に改宗した音楽家のメンデルスゾーン、マーラー、詩人のハイネ、無神論者の哲学者マルクス、精神分析学者フロイトも、先の定義では「ユダヤ人」ではないのですが、ユダヤ人・ユダヤ教徒の家系ということで「ユダヤ人」と呼ばれることもあります。

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