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  • 執筆者の写真秋山善久

所要で気仙沼市に出かけることがあり、1泊だけ別荘に宿泊しました。場所は唐桑半島の先端で、観光案内には必ず載っている名勝地です。コンビニで夕食を買って着いたのが日没直前。宿泊に必要なもの以外は何も持ち込まなかったので、夜明けまで電気も、ラジオも、携帯も、インターネットもない時間を過ごすことができました。あるのは巨岩に打ち付ける波の音とコオロギなど秋の虫の鳴き声。見えるのは、水平線の上を行き交う外洋船の明りと雲間から覗く三日月、それにカシオペアなどの星座だけです。そんな中で、家族の中ではタブーとされる趣味の尺八を吹いてみました。もちろん誰も聞いていないので、「うるさい」などと苦情を言われる心配はいりません。実に贅沢な時間を過ごすことができました。翌朝、別荘を畳んで車に積み込みました。それは一人用のテントとシュラフ、それに1畳程のマットだけです。

  • 執筆者の写真秋山善久

友人とスカイプを使って会話を楽しんでいたときのこと。「今、刑務所から帰ってきたばかりなんだ」といったら、「その言葉は、ほかの人が聞いたら別の意味になるよ」と注意を受けました。私としては、月に一.二度、教誨目的で一人の受刑者を訪ねているので、そのことをいったのですが、聞きようによっては私が刑務所から今出所したみたいに誤解されてしまうということです。刑務所という言葉には、特別な響きがあるものだと改めて覚えさせられました。考えてみれば、特殊な面会なのです。アクリル板を間にして訪問者と受刑者と向き合うのですが、向こう側には刑務官がいて、絶えず話の内容を一生懸命メモしているのです。会議で議事録をとることには慣れていますが、雑談の議事録をとられるのは、そこぐらいしかないでしょう。それに議事録は正確かどうかチェックできますが、そこでのメモはみることができません。「牧師ー怪しい」ぐらい書いてあるもしれない。ちょっとばかりミステリアスな空間です。



  • 執筆者の写真秋山善久

  先日、図書館で調べものをしていたら、落雷のためか突然に停電になってしまいました。すぐに「ただ今、電気系統の故障により停電になっています。担当者が復旧に努めていますが、皆様には大変ご迷惑をおかけしています。」と館内アナウンスが流れました。皆黙ってそれを聞いていたのです。すると、「何で故障なんだ。すぐに直せ」と大声で叫ぶ声がしました。みると激高しているのは、紳士然としたご高齢の方でした。あわてて職員が駆けより、丁寧に説明したものの男性の怒りは治まることがありません。薄暗く静まりかえった館内に、男性の声だけが響き渡っていました。その様子を入館者たちは、半ば呆れ顔で成り行きを見守っていたのです。そのやりとりがしばらくあった後、今度は別の高齢男性が「あいつを静かにさせろ」と女性職員に迫っていました。これには私もあっけにとられてしまいました。昔から雷おやじという言葉がありましたが、近ごろの雷は所かまわず落ちてしまうようです。

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